政府の携帯電話の料金値下げや5Gの普及で何が変わるか?
2020年9月16日より、菅義偉氏による新内閣が発足しました。
菅義偉内閣総理大臣は以前より、携帯電話の料金値下げについて積極的な人です。
総理大臣就任後もこの傾向は続くようで、内閣発足の二日後、前田総務大臣へ携帯電話料金引き下げの実現に向けた改革支持が出されました。
さて、現在、ほとんどの人が携帯を使用しています。
それだけに、この改革は注目度が高いわけです。
携帯電話の料金値下げは、まさに、新政府の改革の目玉となりそうです。
また、今年は3月より、各社が相次いで5G回線のサービスを開始しました。
5G回線のサービスは、まだまだ普及しているとは言い難い状態ではあります。
ただし、今、携帯電話業界は大きな変化を迎えつつあることは言えそうです。
そこで、政治面、技術面、さらにビジネスの面から、携帯電話業界を取り巻く今後の変化、また、5Gの普及が今後の社会へ及ぼす影響について考えていきます。
Contents
携帯電話事業のこれから
携帯電話関連の事業者は特別な立場にあります。
一見、政府が一般的な会社(企業)のサービスの値下げを改革の柱とする、というのはおかしいように感じる人もいるかもしれません。
政府が民間の経営方針に介入するわけです。
そこで、今年の8月27日の記者会見で、当時官房長官であった菅義偉氏がコメントをしているので、少し引用しておきます。
「去年10月に成立した改正電気通信事業法の着実な施行を通じて、高額な違約金の抜本的な引き下げや、通信と端末のセット販売の禁止などに取り組んできたが、現実はいまだ大手3社がシェアの9割の寡占状況だ」
「わが国の料金水準は、諸外国と比較して依然として高い水準であり、3社の利益率も20%と高止まりしており、大幅な引き下げの余地がある。3社は国民の財産である公共の電波の提供を受けていることを認識して、経営にあたってほしい」
つまり、要約すると、
①政府としては「大手3社がシェアの9割の寡占状況」「料金水準が諸外国として高い」という状況をなんとかしたい。
②そのために昨年の10月に電気通信事業法を改正したが、変わらない。
ということです。
そして、「国民の財産である公共の電波の提供を受けていることを認識して、経営にあたってほしい」ということになります。
ポイントは、「国民の財産である公共の電波の提供を受けている」ということです。
このために、ドコモ、au、ソフトバンクは自社の利益率を下げてでも、料金を下げるべき特別な立場にあるのです。
国民の財産である公共の電波
公共の電波の提供を受けているということが一体どういうことなのか、少し掘り下げておきます。
携帯電話ができるより遥かに以前から、ケーブル・コードなどを使わない個人向けの機器はありました。
例えば、テレビやエアコンなどのリモコン、ラジコンなどです。
それから、コードレス電話、電話の子機なども、ある程度は普及していました。
現在ではBluetooth、おサイフケータイ、WiFiなどもあります。
これらの製品はすべて電磁波を利用しています。
電磁波は波長によっていくつかに分類され、この手の遠隔操作に利用できるものとしては、主に赤外線と電波に分類されるものが存在します。
赤外線は、近距離でしか使えないことや遮蔽物に弱いなどの弱点があります。
また、テレビやエアコンのリモコンは、ほとんどがこの赤外線を使ったものです。
今回言及する電波は、波長によって様々な特徴があり、それらを一概に括ることはできません。
ただし、ラジコン、コードレス電話、Bruetooth、おサイフケータイ、Wifiなどは、すべて電波を利用した製品です。
ほとんどの人が、様々な製品を通じて、私的に電波を利用していることになります。
これらのような私的利用が許されている電波もありますが、電波には電波法という法律により私的利用が許されていない波長もあります。
携帯電話の会社が使っているのは、これらの波長です。
これらの電波は、遠距離で利用できたり、遮蔽物があっても問題なく使えたりと、利用価値が高いのです。
その反面、利用価値が高い波長はわずかに限られてもいます。
このため、電波は有限な資源である、という人も中にはいます。
これらの波長を自由に使えてしまうと電波が混線するなど様々な問題も発生します。
せっかく有用な電波を上手く活かすことができなくなってしまうわけです。
このため、利用価値の高い電波は、公共の電波として国が管理し、許可を受けた団体しか利用できないような仕組みになっているのです。
公共の電波である事実が重要!
・電波には自由に使えるものと使えないもの(公共の電波)がある。
公共の電波の現状
公共の電波は、総務省が管理し、各団体に割り当てています。
電波の割り当てられた団体は使用料を支払うことによって、割り当てられた電波を利用することができます。
さて、ここで、問題となるのが、どのような基準で政府が電波を割り当てているかということです。
実は、これには明確な基準がありません。
以下は、総務省のホームページの「周波数割当てプロセス」からの引用です。
①日本では、電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として、電波法に基づき総務省が周波数管理を行なっている。
②周波数管理の基準や方針を定めるに際し、透明性を確保するため、総務省では審議会への諮問やパブリックコメントの募集を行なっている。
基準は、「電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進する」という抽象的な表現にとどまります。
簡単に言ってしまうと、「電波を上手く役立てて、人の役に立ってくれる」という程度のところでしょうか。
この視点で考えると、確かに、携帯電話会社(企業)は携帯電話を普及させ国民の生活を便利にするために役に立っている、と言えると思います。
電話料金自体は他国と比べて高いようではありますが。
これらのことを理解した上で改めて政府の携帯料金値下げの政策を見ると、内容がよくわかります。
つまり、携帯電話のキャリアとしてやっていけているのは、公共の電波の割り当てがあってこそのものなので、少しくらい自社の利益を下げてでも国民の利便性を高めるのは当然だということです。
これ自体は、正当な主張です。
公共の電波の現状!
・公共の電波は不明瞭な基準で割り当てられている。
携帯電話の料金値下げは最善策か?
さて、携帯料金の引き下げの政策は正当なものだということはわかりました。
ほぼすべての世帯が携帯電話料金を支払っていることを考えると、経済効果も大きいのは明らかです。
個人の目線で見ると、単純に家計が助かる、ということは誰もがイメージします。
ところが、実は、それほど単純でもありません。
携帯電話業界は、今後、5G回線の普及のために設備投資・研究開発費に莫大な予算が必要です。
携帯料金を引き下げ、利益を下げてしまった結果、5Gの普及が遅れた、なんてことになると結果的に国民が不利益を被ってしまいます。
また、電波の割り当てでもっとも利益を上げているのは、携帯電話の会社(企業)でなくテレビ関係の放送事業者だという問題もあります。
それだけに、この政策は不公平感があります。
本来であれば、携帯電話事業よりも放送事業の利益を減らすべきですが、残念ながらこれは困難を極めます。
放送事業者にとって不利な法改正を行おうとする政府は、好意的に報道されません。
2010年代初頭に民主党政権が電波法改正案を提出し電波オークション制度を導入しようとして失敗したことを記憶されている人もいるかもしれません。
インターネット(オンライン)の普及により、放送事業の需要は間違いなく下がってきています。
それでもテレビや新聞などのオールドメディアの影響力は、まだまだ強いです。
携帯電話料金が下がるのは確かにありがたいことです。
一見すると、理にかなった政策でもあります。
しかし、今後も成長が見込まれる事業から搾取しオールドメディアに利権を許し続けるのが最善策かどうか、は大いに疑問が残ります。
携帯電話の料金値下げで考えさせられることは?
・公共の電波を利用して最も利益を得ているのは、携帯電話会社(企業)ではなく、テレビ局。
・携帯電話会社(企業)は、今後、5Gの普及のために予算が必要。
5Gの普及が社会に及ぼす影響
携帯電話事業は、今後、5Gの普及のために予算が必要だ、ということについては述べました。
ただし、5Gの普及とは言っても、それがいったいどういうことを指すのか、具体的なイメージのしにくいところです。
多くの人が、ネットが速くなる、くらいのイメージしかつかめていないかもしれません。
5Gって?
5Gとは、正式には第5世代移動通信システムのことで、ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)という国際機関が定義している規格を指しています。
5Gの特徴として、高速大容量・低遅延・多数同時接続などが挙げられています。
規格としては、当然、通信速度などの条件が細かく規定されていますが、一般ユーザーが細部を知る必要はありません。
5Gの要件を満たしていないからといって、5Gという名称が使えないとも限りません。
5Gに近いレベルのサービスが展開できるようになれば、マーケティング上の利点から、各社5Gという名称を使い始めることも考えられます。
この傾向は、4Gの時に顕著に見られました。
2012年に提供がスタートした「Softbank 4G」「au 4G LTE」は、いずれも正確な分類上は3.9Gに該当するものでした。
そもそもの4Gの定義をしているITU-R自体も、3.9Gを4Gと表現することを認めています。
したがって、ここでは、5Gの正確な定義を知るよりも、もっと大きな変化でとらえるべきです。
つまり、5Gで何が変わるのか、何ができるようになるのか、ということに注目してみよう、ということです。
5Gのポイント!
・5Gは、定義よりも、それで何ができるのか、が重要。
5Gの何がすごい?
5Gになっても速くなるだけ・・・、なんて思う人も多いでしょう。
3G~4Gの間もそれくらいしか変化を感じなかった人がほとんどかもしれません。
しかし、3G~4Gの間には、3.5Gや3.9Gがありました。
段階を踏んで変化していったため、急激な変化を感じにくかったわけです。
しかし、実際には、厳密な意味での3Gと4Gの間には大きな隔たりがありました。
改めて見直すと、3Gの時代には空想の世界でしかできないレベルのことが4Gになってできるようになっていることに気がつきます。
1Gから順に、通信速度の話でなく実際に何ができるようになったのか、重要な特徴を見直しておきます。
①1G : アナログ電話。
自動車電話もこれに該当。
まだまだ一般に普及しているとは言えない状態。
②2G : デジタル回線。
これにより通話以外にメール、インターネット(オンライン)が利用できるようになる。
③3G : マルチメディア、データ、及びビデオをサポートする。
自国の端末を他国でも使えるようになる(国際ローミング)。
④4G : WiFiやBluetoothへのシームレスな接続が可能となる。
ユーザーはどの通信を使っているか気にすることなしに最適なネット環境を選択できるようになる。
通常の電波を拾ったりWiFiに切り替わったりというのは、今や当然のものとなっています。
これらは、3Gのサービスが始まったばかりの頃には想像もできないことでした。
さて、5Gでは何が変わるのでしょうか。
先ほど、5Gの3つの特徴を挙げました。
高速大容量・低遅延・多数同時接続です。
これだけを見ると、目新しいものはなさそうに見えます。
5Gになる以前から、スマホの通信はどんどん高速化してきました。
低遅延についてもそうですし、多数同時接続もそうです。
5Gで特筆すべきは、これらが桁違いだということです。
「5Gだと2時間の映画を3秒でダウンロードできる」という話があります。
一般的なユーザーにイメージがつきやすいようにこんな表現が使われています。
しかし、かえってこの説明は5Gの印象を地味にしている気がします。
2時間の映画を3秒でダウンロードする必要があるでしょうか。
まったくありません。
これまで、インターネット(オンライン)は遅く、遅延するのが当たり前だという共通認識がありました。
開発者側もこの点は理解しており、ダウンロードと再生を同時に行うストリーミングなどの技術が発達してきました。
アマゾンプライムビデオなどの動画サイトでは、ストリーミングに加え、回線遅延時には自動的に画質を落とす仕組みなども導入しています。
このおかげで、ある程度であれば回線が不安定でも2時間止まることなく映画を楽しむことができます。
5Gなんてなくても映画を楽しむことは既にできています。
5Gの通信速度は現在の一般ユーザーの要求するレベルをはるかに超えているということです。
「2時間の映画を3秒でダウンロード」ということをもう少し掘り下げて考えてみます。
現在、インターネット(オンライン)で映画を楽しまれている人はどんなインターネット(オンライン)環境で楽しまれているのでしょうか。
スマホの4G回線で見ている、という人は実はあまりいないのではないでしょうか。
通信料は安くありません。
やはりWiFi環境で見られている人が多いでしょうか。
ちなみに、筆者は、インターネット(オンライン)が遅いのは嫌なので、一番安心できそうなNTTの光回線を使っています。
さらに、無線LANだと遅くなるので、有線LANでしっかりと接続しています。
それで、映画をダウンロードしようとすると、なんだかんだ遅延があり、数分かかります。
「2時間の映画を3秒でダウンロード」とだけ言われるとイメージが湧きませんでしたが、現在の光回線と比較すると、その凄さがわかるのではないでしょうか。
一般的な光回線の速度は1Gbpsです。
速いものでも2Gbpsです。
5Gは20Gbpsになると言われています。
つまり、これは、有線接続をはるかに凌駕する速度だということです。
もちろんBluetoothやWiFiなんて比較になりません。
しかも、多数同時接続が可能です。
5Gのすごさって?
・スマホの電波が光ファイバーよりもはるかに速くなる。
5Gで何が変わるの?
今まで経験したインターネット(オンライン)回線の中で最速のものは光ファイバーだ、という人がほとんどだと思います。
5Gにより、スマホがそれよりも遥かに速い回線を利用できるようになります。
しかも、同時に接続できる端末の数も格段に増えます。
5Gが普及すれば、今までSF映画でしか見たことがなかったレベルの通信環境が整います。
そのインフラを利用してどんなことができるのか、はまだまだわかりません。
きっと想像もしなかった製品やサービスが生みだされることでしょう。
少なくとも、IoT(InternetOfThings)の分野が発展することは間違いないでしょう。
IoTという言葉は以前から使われてきていましたが、一般に普及しているとは言い難い状況です。
しかし、少しずつではありますがIoT関連の製品も出回ってきているので、現在ある製品を例に出しておきます。
目立ったものとしては、スマートスピーカーが挙げられるでしょう。
GoogleHomeやAmazonのechoなどが有名です。
これらの端末を利用すると、一部の家電製品を操作することが可能です。
知識がある人であれば、学習リモコンを導入することで、日常利用する家電のほとんどを操作することもできます。
一般的な方法は対応している家電製品を購入することです。
LED電球は有名です。
数年前まではPhilips社の製品やAmazonの純正の製品などを買わなければなりませんでした。
しかし、現在では、アイリスオーヤマのような比較的安価な家電製品を扱うメーカーからもこういった製品が発売されています。
徐々にではありますが、IoTは暮らしの中に浸透していっています。
5Gで、IoTの普及は加速します。
現在、研究、開発の進んでいるものをいくつか紹介します。
まず、自動車業界を見てみます。
自動運転の車が研究されているのは有名な話ですが、そこまでたどり着くにはまだまだ時間がかかるでしょう。
もし、開発に成功したとしても、現在の法律では公道を走ることはできません。
その前段階として、ADAS(先進運転支援システム)の発展が考えられます。
すでに自動ブレーキ、急発進防止装置など、ネットワークを介さないADASは多くの車で搭載されるようになってきています。
ここに5G回線が加わることで、さらに便利になることが考えられます。
各車両がそれぞれインターネット(オンライン)に接続することで、自分の運転している車以外の走行速度や車間距離がリアルタイムに把握できるようになります。
また、前を走る車からの映像も5G回線であれば、遅延なく取得することができます。
この映像と前方の映像を重ね合わせることで、実際に走っている車を半透明化させたAR画像を元に運転できるようになります。
つまり、運転時により広い視野を手に入れることができるのです。
これらの話は、今の我々の感覚ではまだ想像がつきにくいかもしれません。
しかし、前方の車両の視界を利用する技術は、フランスの自動車メーカー「Valeo(ヴァレオ)」が2019年の東京モーターショーで既に発表しています。
同社は、積極的にこの分野の技術開発に取り組んでおり、自動車の遠隔操作などの技術も発表しています。
実質的にこれを可能にするためには、ネットワークの遅延の少ない5G回線が不可欠です。
遠方でハンドルを切ったとして、それが反映されるまでに時間がかかれば、間違いなく事故が起こってしまいます。
こうした理論上可能というだけであった技術が、5Gにより少しずつ現実味を帯びてきている、ということです。
次に、物流業界を見てみます。
現在、物流業界では配送ドライバーの不足が問題となってきています。
これについては、最終的にはドローン配送やUGV(無人地上車両)配送などの構想があります。
しかし、これは盗難の問題もあり、実現にはまだ時間がかかるでしょう。
その前段階として注目されているのが、隊列走行という技術です。
トラックが1列に並んで走行することにより、先頭の1台のみを人間が運転すればそれに続くトラックは自動で運転できる、という技術です。
人間による運転は必要ではありますが、確実にドライバーの人数を減すことができ、比較的導入が簡単だということで注目されている技術です。
ただし、これには、アクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作をリアルタイムに取得、転送できなければなりません。
5Gの回線を利用する前提のもとで研究されている技術です。
この研究は、5Gのキャリアであるソフトバンクが積極的に行っているものです。
ソフトバンクは、2019年、実際に5Gの電波を使い3台のトラックで14kmのテスト走行を成功させています。
これについては、実現の日も近いでしょう。
最後に、決済関連事業を取り上げます。
2019年は、キャッシュレス元年と言われました。
とりわけ、QRコード決済は短期間で普及した印象があります。
中国のアリペイが先駆け的な存在でした。
日本でもアリペイと提携したペイペイを筆頭に、LINEペイ、楽天ペイ、d払い、auPay、メルペイ、ファミペイなど様々な会社(企業)のQRコード決済が乱立している状態です。
なるべく少ない情報量で確実な認証をすることを考えると、QRコードは最適なものだと言えます。
しかし、5Gが普及すれば、情報量を気にする必要がなくなります。
確実かつ円滑な決済のために研究が盛んなのは、顔認証による決済です。
店内の複数の高精度カメラで顔認証をすれば、欲しい商品をお店から持ち出すだけで決済が完了する時代がくるかもしれません。
レジの混雑とは無縁になります。
まるで、SFの世界のようです。
しかし、これもすでに研究の進んでいる分野です。
2019年より、大阪メトロが、地下鉄の改札で顔認証による自動改札の実証実験を始めました。
現状は、地下鉄という限られた範囲のみの実験ではあります。
今後の展開に大いに期待したいところです。
5Gにまつわる新しいビジネスモデル
ビジネスを語る際、BtoB、BtoC、CtoCという言葉を使うことがあります。
Bをビジネス(会社・企業)、Cをカスタマー(消費者)として、会社(企業)間の取引なのか、会社(企業)と顧客間の取引なのか、個人間の取引なのか、を分類する時の言葉です。
携帯電話業界のビジネスを表す時、これまではBtoXという言葉がよく使われていました。
通信キャリアは、会社(企業)も一般消費者も同様に顧客とすることができるからです。
5Gが普及した後、通信事業者は、BtoBtoXという考え方をすることが重要になると言われています。
今後は、携帯電話の利用者と直接取引だけではなくサービス提供者に対して通信設備の提供、導入支援を一括受注する形での取引が重要になる、という見方です。
5G普及後、インターネット(オンライン)回線はいたるところに常にある状態になります。
顧客と直接つながるサービス提供者を顧客とすることで、他のインターネット(オンライン)回線を通じて顧客とも直接つながることができるようになります。
このビジネスモデルはNTT東日本が医療機器メーカーを顧客として開拓し、病院などと直接つながった成功事例がすでにあります。
また、自動車のADASの場合、直接自動車を購入する人とつながる必要はありません。
通信事業者は、自動車会社(企業)を顧客にし、5Gを有効に活かせる設備を提供し、そこから対価を得ればいいのです。
自動車を購入した人は、きっと自分のスマホや他の機器とも連携させていくことになります。
その情報をもとに他のサービスの提案を行うこともできるでしょう。
このBtoBtoXモデルで考えると、5Gの提供先は携帯電話以外にも広がります。
実際のところ、携帯電話のユーザー数はやがて頭打ちを迎えることも考えられます。
また、2019年に新規参入した楽天モバイルにより、携帯電話業界の競争も激化していくことは避けられません。
加えて、この記事の冒頭に取り上げたとおり、政府の方針である以上、携帯電話の料金は今後は値下げが確実です。
一見「携帯電話の料金値下げの方針」とは無関係に見えるこうした新しいビジネスモデルを取り入れることで、価格競争とは別のところで、付加価値の高い商品を提案していくことが可能となります。
効率的にエンドユーザーとつながることができれば、その情報は、さらに、次の商品に生かされていくことでしょう。
5G普及後のビジネスモデル!
・通信事業者は端末の契約以外に、企業を相手とした5Gの導入支援をするビジネスを展開する。
5Gをめぐって法律も変わっていく
5Gをめぐって世界はより便利になっていく方向に動いていますが、実は、現状の法律では対応できない事態も多い、ということが言えます。
菅義偉新内閣発足後、早速、携帯料金の値下げが注目されましたが、5Gの普及に伴い法整備すべき分野は多岐に渡ります。
2019年に、実は、道路運送車両法という法律が改正されました。
これには、今後の自動運転に備えた改正点がありました。
これまで非現実的であった自動運転が現実味を帯びてきたためです。
改正道路運送車両法には、これまで記載のなかった「自動運行装置」という言葉の定義に関する記載があります。
今後、5Gが普及していく中で、自動化が進めば、現在の法律では不十分な部分も同様に増えていくことは容易に想像がつきます。
5Gで法律も変わっていく!
・5Gは、携帯電話業界を変えるだけでなく、政治、技術、ビジネス、法律にも影響を与える。
まとめ
5Gがこれまでの常識を覆すようなインフラになることが、だんだん見えてきたのではないでしょうか。
5Gは、単に携帯電話業界を変化させるだけでなく、政治、ビジネス、法律までも巻き込んで私たちの身近な生活に変化を迫る概念になりそうです。
これからどのようなサービスが生み出されるのか、にも大いに期待と注目が集まります。