ネットワークビジネス?ねずみ講?MLM?マルチ商法?違いを解説!

 

 

ネットワークビジネスには、似た言葉、紛らわしい言葉があります。

「ねずみ講」、「MLM」、「マルチ商法」などが有名です。

さて、これらの言葉の違い、どのように理解すればよいのでしょう?

俗称は様々に存在しますが、ポイントとして押さえておきたいところは、これらの取引形態が法律によって定義され、禁止、または、厳しく規制されている、という点です。

 

 

「無限連鎖講」と「連鎖販売取引」

 

限連鎖講の防止に関する法律(19795月施行)

この法律は、一般に「ねずみ講防止法」と言われます。

「無限連鎖講」とは、

 

ひとりの加入者が二人以上の者を勧誘して加入させることを前提にして、下位者が上位者に支払う金品によって儲ける配当システムを採用する組織のことです。

 

わかりやすい例を言うと、

 

自分を誘った人に加入金として10万円を支払う代わりに、自分が二人以上の人を誘ってそれぞれから同じように加入金として10万円をもらい、その10万円のうちの5万円は自分に、残りの5万円は自分を誘った人から上の人たちに差し出して分配していく。

 

こういうことの連鎖を繰り返す、というやり方です。

 

このシステムは、勧誘するだけで金品が得られるという手軽さから蔓延しやすく急速に拡大しやすいわけですが、人口が有限である以上、いずれ必ず連鎖が破綻し、最終的に人を誘えずに損をしてしまう人がたくさん出てきます。

 

例えば、ひとりの人が二人の人を誘うやり方を続けていけば、

人数は、

 

1→2→4→8→16→32→64→128→256→512→1,024→2,048→4,096→8,192→16,384→32,768→65,536→131,072→262,144→524,288→1,048,576→2,097,152→4,194,304→8,388,608→16,777,216→33,554,432→67,108,864→134,217,728人🙀😱💦

 

28代目の段で日本の人口を超えてしまう。

無理なこと、被害者が出ることがはじめから既にはっきりしているわけです。

 

「無限連鎖講の防止に関する法律」は、1970年代にこのシステムを採用した取引が事件化したこと(天下一家の会事件、被害者数112万人、被害額1,900億円)を背景に生まれました。

もともとは金銭を用いた取引のみがこの「無限連鎖講」の対象でしたが、後に、国債を用いてこの配当システムを採用する取引による事件が発生したため(国利民福の会事件、被害者数1万人、被害額36億円)、1988年には法改正が行われ、「無限連鎖講」の取引の対象は「金銭」から「金品」に改められ、国債などもその対象に含まれることになりました。

 

この「無限連鎖講」は、刑事罰をもって禁止されています。

 

具体的には、以下のとおりです。

 

無限連鎖講を開設または運営した者には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはそれらが併科され(第5条)、業として加入の勧誘をした者は1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる(第6条)、さらに、単に加入を勧誘しただけの者も20万円以下の罰金に処せられる(第7条)。

 

特定商取引に関する法律(特商法、旧訪問販売等に関する法律、197612月施行)

この法律は、業者と消費者との間における紛争が生じやすい取引を「特定商取引」と定義して、このような取引による不当な勧誘などを規制するものです。

これにより、一定の条件を満たす販売取引が「連鎖販売取引」として法的に定義づけられ(第33条)、厳格な規制を受けています。

 

以下のような条件をすべて満たす販売取引が「連鎖販売取引」である、とされています。

 

物品の販売(または役務の提供等)の事業であって

 

再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を

 

特定利益(紹介料や販売マージン、ボーナス等)が得られると誘引し

 

特定負担(入会金、商品購入費、研修費等の名目で、何らかの金銭的な負担)を伴う取引(取引条件の変更を含む)をするもの

 

わかりやすく言うと、

 

「連鎖販売取引」というのは、

個人が販売員となってさらに他の誰かを販売員として勧誘していくことで販売組織を拡大していくやり方で、

「無限連鎖講」と異なる特徴は、取引の対象が金品でなく、商品やサービスである点です。

 

「連鎖販売取引」については、定義要件が拡大し、規制が強化される流れで法改正が行われてきています。

主な例として、2004年の改正で以下の規制が加わっています。

 

・契約締結前や契約締結時の書面交付や義務付け

 

・広告への一定事項の表示の義務付けや誇大広告の禁止

 

・不適切な勧誘行為(不実告知、威迫困惑行為等)の禁止

 

・クーリングオフは20日間(一般の訪問販売は8日間)

 

・中途解約権の付与

 

こうした「誇大広告」や「不実の告知」などに関する規制を十分にわきまえない活動は違法性を問われることになるので、「連鎖販売取引」による活動には細心の注意が必要です。

 

「連鎖販売取引」は、

きわめて厳しい条件下のもとに違法性を免れている販売取引である、

 

と言えるでしょう。

 

「無限連鎖講」と「連鎖販売取引」の特徴のまとめ

 

無限連鎖講は・・・

1. 組織そのものを指して問題視している。

 

2. 金品の受け渡しが目的である。

 

3. 刑事罰をもって禁止されている。

 

連鎖販売取引は・・・

1. 個々の取引に着目している。

 

2. 商品やサービスの流通が目的である。

 

3. きわめて厳しい条件下のもとに違法性を免れている。

 

4. では、こうしたことを踏まえて、それぞれの俗称について見ていきましょう。

 

ねずみ講とは何か?

この「ねずみ講」が、後に、「無限連鎖講」として扱われるようになりました。

無限連鎖講については既に述べましたが、この「ねずみ講」の「ねずみ」というのは、ねずみ算的に増幅する組織の特徴を例えたものです。

 

「ねずみ講 = 無限連鎖講」というとらえ方で間違いではありませんが、ただし、最近では、「無限連鎖講」でなくても、「連鎖販売取引」やそれに似た性質のものも含めて「ねずみ講」と呼ぶ場合もあります。

紛らわしいところですが、ポイントとして押さえておくべきなのは、俗称の呼び方によらず、「無限連鎖講」に該当すると判断される組織は違法である、という点です。

 

マルチ商法とは何か?

「マルチ商法」の「マルチ」は、「マルチ・レベル・マーケティング・システム(multi-level marketing system)」から取られたもので、MLMの略称がよく用いられます。

また、日本では、よく、「ネットワークビジネス」の名で知られています。

ねずみ算式に販売員を増やしていくことから、「ねずみ算セールス」と呼ばれることもあったりします。

 

一般に、「マルチ商法」、「ネットワークビジネス」、「MLM」は同義で用いられることが多く、それらは、「特定商取引に関する法律」の「連鎖販売取引」に該当するものを指しており、「無限連鎖講」であるところのいわゆる「ねずみ講」と区別されます。

ただし、「マルチ商法」という言葉も、用法が非常に曖昧であり、「連鎖販売取引」のうち、特に悪質なものを指して用いる場合もあります。

 

また、「マルチ商法 = 連鎖販売取引」であるか、という点は、各省庁や消費生活センターなどの公的機関においても、必ずしも見解が一致していないようです。

 

マルチまがい商法とは何か?

「マルチまがい商法」も曖昧な言葉で、「特定商取引に関する法律」で規制しきれない悪質な「マルチ商法」のことを指して用いられていたり、あるいは、逆に、「マルチ商法」という呼び名ではイメージが悪いとのことから「マルチ商法ではない」という意味で用いられていたり、など様々な例があるようです。

特に、悪質な「マルチ商法」を指して、「悪徳マルチ商法」と呼ぶこともあります。

現在は、法改正が進み、「マルチ商法」の定義が拡大したため、こうした言葉はあまり使われなくなりました。

 

「連鎖販売取引」の勧誘時の注意点

MLM(ネットワークビジネス)などを取り巻く俗称は様々ですが、いずれにしても、これらは俗称に過ぎず、大切なこととして、まずは、「法律によって禁止されているもの」と「法律の厳しい規制のもとで活動が許されているもの」とがある、ということをよく理解しておくべきでしょう。

 

商品の流通があることで「連鎖販売取引」を装いながら、実質は「無限連鎖講」と変わらないビジネスを行っている、というケースも存在し、そうしたものは個別に違法性を判断されることになります。

粗悪品を高額で売ったり、高額な会費を取ったりなどが代表的な例です。

 

また、必ずしも、どの企業のビジネスだから安全である、ということではなく、実際にそのビジネスで活動をするひとりひとりの理解やモラルが大きく問われている、という点も大切になってくるかと思います。

以下に、連鎖販売取引の勧誘活動で違法となる代表的な例をあげておきますので、参考にして下さい。

 

勧誘の目的を告げずにアポを取る(氏名などの明示、特定商取引に関する法律第33条の2

×「あなたに合わせたい人がいる」

 

◯「サプリメントと化粧品を扱っているマルチ商法の件でお誘いしたいので、あなたを◯◯さんという人に合わせたい」

 

事実と違うことを伝える、重要事項について伝えない、(不実の告知、事実の不告知、第34条、誇大広告などの禁止、第36条)

×「簡単に稼げる」、「絶対に成功する」、「病気が治る」などと伝える、クーリングオフについて説明しない

 

◯「簡単には稼げない」、「稼ぐまでにはどれくらいの負担がかかる」などを伝える、クーリングオフについて説明する

 

一度断られた人をまた勧誘する(再勧誘の禁止等、第3条の2

 

公共の場所以外での勧誘(禁止行為、第6条)

×会員の自宅、知人宅、ホームパーティーの場で勧誘

 

◯ホテルのラウンジ、ファミレスなどで勧誘

 

必要書類を渡さずに契約する(第37条の2

×口約束だけで契約、概要書面、契約書面のうちどちらか片方だけ渡して契約

 

◯概要書面、契約書面の両方を渡して契約

 

まとめ~インターネット(オンライン)の時代になって~

さて、違法性の有無の如何に関わらず、MLM(ネットワークビジネス)は、一般に、誤解を受けやすい取引であることは確かです。

イメージの問題もありますが、それで話を片づけるのでなく、取引の際にトラブルが発生しやすい現実があるからこそ法律が目を光らせざるを得ない、ということへの理解は大切です。

インターネット(オンライン)上でマーケット戦略によって展開するMLM(ネットワークビジネス)が流行りつつある今、昔風のしつこい勧誘をしなくても済む、という意味では、少なくとも、イメージの上ではMLM(ネットワークビジネス)は少しずつスマートになろうとしているかもしれません。

ただし、インターネット(オンライン)集客MLM(ネットワークビジネス)であっても、その実態は、SNS上でダイレクトメッセージを使って明らかに違法だとわかる情報を見せびらかして行うしつこい勧誘だったりするケースなども見かけます。

また、初回登録料や経費が安価であるかどうか、という点だけが安全性の指標であるかのような語り口のホームページの記事もたまに見かけますが、

これなどは、売りつける側だけの都合に沿った大変危険な解釈です。

例えば、一万円を高いと思うか安いと思うか、は人それぞれです。

「本人が納得して入っているからそれでいい」、「やりたくなきゃやめればいい」、などというのでは論理が通りません。

納得して続けるだけの判断材料もやめる決断をする判断材料も、金銭の負担のことだけではないからです。

仮に出費が千円であっても、契約の後になって、聞かされたことと実際の中身と大分イメージが違う、というトラブルでも発生したなら、誘われた側にとってそれは紛れもない「被害」です。

MLM(ネットワークビジネス)に長く関わるのであれば、こういうことが決して起きないように誠意を尽くすことも大切です。