都の感染2,447人!withコロナ時代と上手に向き合うヒント
2021年を迎え、国内の新型コロナウイルスの感染者数は増加の一途を辿っており、残念ながらこの状況は今のところ収まる気配がありません。
昨年、菅義偉首相からも、感染者数の増加を抑えるために静かな年末年始を過ごすように国民への求めがあったものの、なかなかその効果は表れていません。
既に感染者の対応に追われる医療現場の活動も限界に達していることなども、メディアでは報じられています。
この記事では、首都圏を中心に感染予防をしながらきわめて制限の厳しい日常や社会での営みを強いられる私たちが今考えるべきビジネスの課題などについて、国内の現状を踏まえながら考察していきます。
コロナウイルスの感染状況
2021年1月6日現在で国内で報告のあった新型コロナウイルスの感染者数は6,004人で、この日、初めて国内の新規感染者数が6,000人を超え、二日連続で最多を更新しました。
この時点で前日の5日と比べると感染者数は千人以上増えているのですが、内訳は、東京1,591人、神奈川591人、埼玉394人、千葉311人と、緊急事態宣言の検討対象とされていた1都3県だけで全体の半数近くを占めていることもわかっています。
さらに、翌日の1月7日には、東京都から都内で新型コロナウイルスの感染者が新たに2,447人確認されたことが発表されており、感染者数はいよいよ爆発的増加の様相です。
こうした中、新型コロナウイルス感染症のワクチンにも人々の期待が日増しに高まっています。
日本では、現在、複数のワクチンの臨床試験が進んでおり、海外での臨床試験のデータと合わせて承認申請され、2021年2月末にはワクチンの接種が始まるものとみられています。
まずは医療従事者から、その後は高齢者や介護施設職員に接種する方針のようです。
緊急事態宣言の再発令について
この状況を受けて、政府は、1月7日、ついに、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の再発令を決定しました。
東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県が対象で、期間は1月8日から2月7日までの一か月間。
主な内容は以下のとおりです。
①午後8時以降の不要不急の外出の自粛を住民に徹底する
②飲食店などに対して営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供は午前11時から午後7時までとするよう要請する
③正当な理由がないにもかかわらず要請に応じない場合には、特別措置法に基づく指示を行い、公表する
④要請に応じた飲食店に対して協力金の支払いを行う都道府県を支援する
⑤イベントは、人数の上限や収容率、飲食を伴わないことなどの要件を設定し、それに沿った開催を要請する
⑥職場への出勤者の7割削減を目指し、テレワークやローテーション勤務などを強力に推進する
⑦午後8時以降の勤務を控えることや、時差出勤や自転車通勤などの取り組みを進める
⑧学校などに対しては一律に臨時休校は求めず、また、保育所や放課後児童クラブなどにも開所を認め、地域の感染状況に応じた感染防止策の徹底を要請する
⑨大学入学共通テストや高校入試については、感染防止策や追試験など受験機会の確保に万全を期したうえで予定どおり実施する
西村康稔経済再生担当相によると、この決定の趣旨は、「経済活動を幅広く止めるのではなく、感染リスクの高い飲食を伴うものを中心として対策を講じ、飲食につながる人の流れを制限する」ことだそうです。
まずは、何としても感染拡大を食い止めるべく対策を進め一か月後に必ず事態を改善させる、というのが政府の当面の目標のようです。
また、この宣言の解除については、感染や医療のひっ迫状況が「ステージ4(爆発的感染拡大)」から「ステージ3(感染急増)」相当になっているかなどを踏まえて総合的に判断する、とされていますが、今のところ、この期間が延長し長期化する可能性も十分に考えられそうです。
こうしてみると、比較的人々の感染防止への関心の高かった前回の緊急事態宣言時と比べても、現在の事態は深刻だと言えます。
大都市圏の感染の急拡大が地方にも影響している中、政府の施策に期待する一方で、国民ひとりひとりが感染防止に対してこれまで以上に高い意識を持った取り組みをすることがもはや不可欠な状況になっていると言えます。
倒産や失業の実態と政府の主な補助や支援
新型コロナウイルスの感染拡大により外出自粛の動きが全国的に広がる中、このことが今経営や雇用に及ぼしている影響も無視できません。
倒産については、ラーメン店や焼き肉店などの専門料理店や居酒屋を中心とした飲食業が最も打撃を受けており、東京商工リサーチの発表によると、2020年の飲食業の倒産(負債額1千万円以上)件数が前年比5.3%増の842件で、この値はこれまでの最多件数であった東日本大震災で景気が減速した2011年の800件を超えて過去最多となっています。
飲食を伴う現場は特に感染リスクの高さが指摘されており、先述の政府の方針のとおり、飲食店への営業時間の短縮などの規制が再び始まることで、今後もしばらくは飲食業は大変な苦境に立たされる状況が続きそうです。
また、雇用については、かねて厚生労働省は国の雇用調整助成金などを活用し会社(企業)に雇用を維持するよう呼びかけてきていますが、それでも、現在、新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めで仕事を失った人の数は見込みも含めて8万人を超えたことが、厚生労働省の調査でわかっています。
なお、この人数は、全国のハローワークなどで把握したものであるため、実際にはさらに多いとみられています。
前回の緊急事態宣言時は国民に一律10万円配布された特別定額給付金も、現状では再配布される予定はなく、売り上げが落ちた中小企業などを助ける持続化給付金や家賃支援給付金についても、政府は1月15日に締め切られる当初の予定を延長しない方針のようです。
一方、2月末に期限を迎えるコロナによる休業手当の一部を補助する雇用調整助成金の上限額引き上げの特例措置については、延長する方針とのこと。
また、緊急小口融資や公庫による無利子無担保融資のための資金は確保され、これについては手続きも簡素化されるようです。
給付から融資へ。
2021年になり、我が国の経営や雇用は「ひとまず生き延びる」というステージから「この状況を何とか打開し知恵を絞り生まれ変わる」というステージへと差し掛かっている、と言えるかもしれません。
新しいサービスの試み
コミュニケーションのあり方の変化が暮らしや社会に及ぼす影響は、はかり知れません。
今、インターネット(オンライン)が台頭した1990年代やリーマンショックのあった2000年代後半以来の時代の大転換期(ニューノーマル)が来ている、とも言われます。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために「人と人との密接した空間を避けること」が私たちの日常における新しい常識になった今、私たちが向き合う令和のニューノーマルは、「人と会う」という最も単純な手段にすら部分的ではあれ早急な変革を私たちに迫ってきています。
日常では、マスク着用が当たり前になったりするなど従来の生活様式も一変し、職場の環境でも、テレワークなどのキーワードを頻繁に耳にするようになってきました。
つい最近まで、毎日都心のオフィスまで電車で通勤するのは当たり前、だったはずが、その考え方が早くも崩壊しかけてしまっています。
そうした中、今大変厳しい経営活動を強いられている飲食店でも、配達(デリバリー)やテイクアウトのサービス、ECサイトを始めたり、あるいは、これまであまり目を向けてこなかったSNSなどを通じた宣伝活動に積極的に力を入れたりする動きも見受けられるようになりました。
家庭や介護施設などにシェフが出張して普段と違う料理を手軽に振る舞うサービスなどにも、注目が集まっています。
また、単に従来のサービスの活動の範囲を広げる試みにとどまらず、新たな商品の開発への取り組みが功を奏している例も既に現れています。
例えば、車載の電子機器や精密機器を専門に製造するメーカーが、医療現場やスーパーなどの接客販売の現場で依然として不足し需要の高いマスクに目を向け、独自の金型や成形技術で培ったノウハウや設備を生かした高品質の飛沫防護マスク(フェイスシールド)を製造して、一定の需要を得ています。
世の中の変化に合わせた新たな取り組みとはいっても、どうやら、多くの場合、これまでの活動の畑を突然派手に飛び出して別の畑に飛びついて上手くいくというより、需要の変化する部分に対応しながらも本来の得意なフィールドを生かして勝負するところにポイントがありそうです。
withコロナの時代は、これまで人々を喜ばせてきたサービスの、その奥にある普遍の価値の本質を改めて見つめ直すきっかけにもなっている、と言えそうです。
テレワークが教えてくれること
今回の緊急事態宣言の政府の方針の中には、「職場への出勤者の7割削減を目指し、テレワークやローテーション勤務などを強力に推進する」という内容も含まれています。
これまでも新型コロナウイルスの感染拡大防止の重要な鍵になると見られていたテレワークですが、働き方のスタイルの大きな変化を受け入れるには、それなりに職場の深い理解と決断が欠かせなかったはずです。
ただし、今までテレワークに対して距離を置き腰の重かった会社(企業)なども、どう対応するかをいよいよ本気で具体的に考えなければならない局面に立たされています。
まずは、会社(企業)毎に、事業の目的の本質を改めて振り返りオフィスの外でも可能な業務とそうでない業務とを明確に切り分け整理する必要があるでしょう。
テレワークの経験者に「オフィスワークで無駄だと思うことは?」というアンケートを取ると、「通勤時間」、「朝礼」、「雑談」、「紙の資料」という順番で声が上がる、という話を聞いたことがあります。
何を無駄に感じるかは人それぞれである上、本当にそれらが無駄になっているかどうかも職場によってケースバイケースではあるにせよ、「もともとずっと存在していた無駄にテレワークがきっかけで気づいた」という実感を持つ人は今はどうやら少なくないようです。
一口にテレワークと言っても、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)など形態は幾つかありますが、いずれも、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を上手に活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方に切り替えることが狙いです。
環境さえ整えばテレワークは全国どこでも実施することが可能で、会社(企業)側としてもテレワークを導入するメリットは様々あり、大きなものとして以下の2つが挙げられます。
①人材を確保できる
採用の面においてオフィスの近隣に限らず地方在住者や海外在住者など多様な人材を確保することができ、人材不足を補うことが可能です。
また、通勤や環境の無駄を省くことが従業員のストレスや不満を大きく減らし、「長くこの会社(企業)で働きたい」と考えるようになることで、離職率の低下も見込めます。
②コストを削減できる
テレワークを導入することで通勤の交通費が不要になります。
職場によっては、時間外手当や出張費、オフィスの管理費なども削減することも可能です。
必要な人材を効率よく確保しつつコストを抑える工夫は、結局は、今後体力を失わずに快適に長くビジネスで活躍していく上での欠かせない条件になっていくはずです。
世の中のすべての業務をテレワークで済ますことは不可能に違いありませんが、とは言え、コロナ禍をきっかけにこれまでのオフィスワークを一度客観的に外から眺める機会を与えられた私たち。
はたして、今後、世の中が再びコロナ禍以前の働き方に完全に戻ってしまう、と考えるのは現実的でしょうか?
冷静になってみると、既に人と実際に会わなければ達成できないコミュニケーションや取引の場面は相当少ない時代になっていることに気づかされます。
実際にテレワークで年間約1,500万円のオフィスコストと年間約3,000万円の時間外手当コストを削減した会社(企業)の例も既にあるそうです。
「これまでの考え方から変化すること」を私たちに迫るwithコロナの時代。
変化を余儀なくされて動き出す人、チャンスの到来を感じて動き出す人、それぞれにとってテレワークを上手に使いこなすかどうか、によっても明暗が分かれていきそうです。