【知ってお得⑥】世界一の富豪イーロン・マスクってどんな人?

 

2021年01月07日、Yahooニュースのメイントピックにイーロン・マスク氏が世界一の富豪となったことを伝える記事が上がりました。

筆者の職場でも、資産が国家予算並みだとかどうやったら使い切れるのかとか、何かと話題に上りました。

こういった記事が上がってしまうと、多くの人がその資産にばかり注目し、単なる金持ちという印象で片付けてしまいます。

最近では、ビットコインに投資したニュースも上がり、さらに印象がお金と結びつくようになってしまったようにも思います。

イーロン・マスク氏が手がけるテスラやスペースXなどの会社(企業)は、日本での知名度はそれほど高いわけではないため、さらにこの傾向が顕著です。

しかし、これまでの経歴を見る限り、このイーロン・マスクという人、どうやらお金にばかり興味のあるタイプの人とはまるでかけ離れているように感じられます。

この記事では、そんなイーロン・マスク氏について紹介します。

 

 

生い立ちとの立て続けの成功

イーロン・マスク氏が手がけるテスラやスペースXはアメリカの会社(企業)ですので、もともとアメリカ人のように思われている人も多いかもしれません。

ところが、実際には、イーロン・マスク氏は南アフリカ共和国生まれです。

1971年、イーロン・マスク氏は南アフリカ共和国・プレトリアで生まれました。

10歳の時にはコンピュータを購入し、独学でプログラミングを学び始めます。

そのわずか二年後、Blasterという商業ソフトウェアを販売してしまいます。

若干12歳で、すでに商業価値のある製品を作り出せる才能には驚きます。

その後、地元のプレトリア大学、カナダのクイーンズ大学、アメリカのペンシルバニア大学へと進学した後、スタンフォード大学へ進学後、たった二日で退学し、起業に踏み切ります。

この頃から、人類の進歩に貢献する分野は「インターネット(オンライン)」「クリーン・エネルギー」「宇宙」だと考えていたそうです。

 

最初の起業、Zip2

イーロン・マスク氏が初めて起業したのは、1995年、24歳の時のことでした。

1995年というとWindows95が発売された年です

Windows95以前にも家庭用のパソコンを作るという構想は常にありました。

MicrosoftのWindows3.1やApple社のマッキントッシュなど、各社がしのぎを削っている状態でした。

Windows95はこの争いに決着をつけました。

つまり、1995年は初めて本格的な家庭用のパソコンが発売された年だと言えます。

もちろん、これがきっかけとなり、インターネット(オンライン)も普及していくことになります。

しかし、1995年当時、インターネット(オンライン)はまだまだごくわずかな愛好家のためのものでした。

イーロン・マスク氏は、この段階で、インターネット(オンライン)の可能性を確信し、Zip2というオンラインコンテンツを配信する会社(企業)を立ち上げます。

オンラインコンテンツの配信なんて、今では目新しくもなんともありません。

しかし、当時は違いました。

わずか四年の間で、会社(企業)は急成長し、コンパック社に三億七百万ドルで買収されることになります。

この時、イーロン・マスク氏は2,200万ドル(約25億円)を手に入れました。

イーロン・マスク氏のような実業家たちの経歴を紐解くと、このような途方もない金額がいくつも並ぶことになります。

筆者のような凡人の感覚で考えると、この金額は人生のゴールと言えるような金額です。

現在、日本の主要な宝くじの一等当選金額は概ね10億円程度です。

イーロン・マスク氏は30代を目前に宝くじ一等を二回当てるのと同等の金額を手にしたわけです。

普通の人がこれだけの金額を手にしたら、後は働かずに暮らそうとするのではないでしょうか。

 

X.com(paypalの前身)

イーロン・マスク氏はこの程度の成功で満足できるような人ではありませんでした。

1999年、Zip2を売却すると、すぐにX.comというオンラインでの金融サービスと電子メールで決済を行う会社(企業)を設立します。

さて、これも今では当たり前すぎるものです。

現在は電子メールでの認証のような回りくどいことをしなくても、簡単に支払いができるようになっています。

また、多くの人がネットでショッピングを楽しんでいます。

実店舗ですらスマホで簡単に支払いを行うことができます。

最近ではQRコードやバーコードを用いたPayPay,LINEペイなどの決済手段が飛躍的に普及しましたし、それ以前から、RFIDを用いたFelica、iD、Edyなど非接触の決済方法がありました。

では、イーロン・マスク氏がX.comを起業した当時はどうだったかを考えてみます。

この時期は、まだ、ネットショップですら簡単に決済を行う方法はなく、また、そもそもネットで買い物をするということすら一般的ではありませんでした。

そうは言っても、X.comがどれだけ革新的なサービスであったのか、買い手の視点だけで考えると分かりにくい部分がありますので、売り手の視点で見てみましょう。

例えば、あなたが何らかの製品を売る場合、現金以外の決済方法を導入しようとするとどんな方法があるでしょうか。

小売店などを営まれている人は別ですが、普通のサラリーマンや主婦はよく分からないと思います。

現在はQRコード・バーコード決済であれば、すぐに使うことができます。

これらのシステムは個人間の送金にも対応しています。

つまり、やろうと思えば、昔ながらのフリーマーケットですら決済手段としてバーコード決済を導入することができるのです。

また、最近は投機商品としての印象の強い仮想通貨も、本来は決済を安全かつ簡単に導入するためのシステムなので、知識があれば、ほとんどコストをかけることなしに導入できます。

さらにはそもそもそういった売買の仕組みを持つプラットフォームを利用することもできるでしょう。

メルカリなどのフリマアプリ、amazon・楽天・Yahooショッピングなどの各種ECサイト、それからヤフオクなどのオークションサイトなど決済システムを持った売買プラットフォームは多種多様です。

イーロン・マスク氏がX.comを起業した1999年には、これらのサービスのほとんどは存在していません。

amazonは古くからあるサービスで、この1999年当時もアメリカには存在していました。

しかし、個人間の売買ができるamazonマーケットプレイスのサービスが開始されたのは2002年のことです。

日本に至ってはもっと遅れており、amazonが日本に参入してくるのはX.com創業の翌年である2000年のことです。

また、楽天市場の開業も2000年です。

つまり、日本ではインターネット(オンライン)で買い物はできないと言っても過言ではない時代でした。

売り手の視点に立つと、X.comがどれだけ魅力的なサービスかよく分かるはずです。

その当時、初めて登場した個人が簡単に導入できる決済手段だったのです。

このような革新的なサービスが注目を浴びないはずがありません。

創業の翌年、同様の事業をしていたコンフィニティと合併し、2001年には社名をPaypalと改め、同時期に急成長を遂げていたアメリカのオークションサイトeBayの主要な決済手段となりました。

2002年にはeBayに買収されることになります。

この時、イーロン・マスク氏が手にした金額は1億8000万ドル(約200億円)になりました。

そして、十分な資金を得たイーロン・マスク氏は、やがて「インターネット(オンライン)」の舞台を去り「クリーン・エネルギー」と「宇宙」の分野へと進出していきます。

 

わずかな差が成功につながった

少しだけ、この当時の日本の状況を見ておきます。

paypalがeBayに買収された2002年、後に個人のネットショップで頻繁に使用されることになるイプシロンという決済サービスが創業しています。

また、2004年から2005年にかけて、個人がネットショップを持つことのできるサービスとして有名なカラーミーショップのサービスが始まります。

改めて見ると2000年頃、インターネット(オンライン)の発展は本当に目覚ましかったと言えます。

Zip2やX.comは、当時からすると、革新的なサービスでした。

しかし、ほんの二、三年遅ければ見向きもされないもの、もしくは競合の多数ある業界となっていたでしょう。

イーロン・マスク氏はこのような変化の目まぐるしい業界でいち早く需要を察知し、勝ち抜いてきたと言えるでしょう。

 

ポイント!

・まず、Zip2というインターネット(オンライン)コンテンツ会社(企業)で成功。

・次にpaypalというインターネット(オンライン)決済の会社(企業)で大成功。

 

インターネット(オンライン)事業から宇宙開発へ

上で少し触れましたが、イーロン・マスク氏は大学生の頃から、宇宙開発に興味を持っていました。

本格的に宇宙開発の分野に取り組むきっかけとなる出来事は、paypal売却の前年に起こります。

この年、イーロン・マスク氏は宇宙探査への公共の関心を呼び覚ますため、MarsOasisというものを考案します。

これは、火星に小規模な温室を設置し、その中で、植物を栽培しようというものでした。

この計画を検討していく中で、イーロン・マスク氏はロケットの価格が高すぎるということに気付きます。

それもそのはず。

宇宙開発はほとんどが国家プロジェクトでした。

国の資金を使って、様々な企業を巻き込んでいくため、どうしても割高になってしまいます。

これらの非合理的な組織を垂直統合し、ハードウェアの85%を自社生産、ソフトウェアもモジュール化して細分化するアプローチを採用すれば、コストが下げられます。

他の事業であれば、当然のことだったかもしれません。

しかし、リスクの高い宇宙開発で他の事業と同じような手法を取った人はいませんでした。

そして、これらの手法を採用すると、最終的な適正価格は現在の販売額の3%程度であると試算されました。

ここにビジネスチャンスがあると考えたイーロン・マスク氏はスペースXを創業しました。

イーロン・マスク氏が最終的に目指すのはあくまで、火星への移住です。

まず、火星の温室で、植物を生産し、人間が自律的に生活していける環境を準備します。

そして、人間が生活するコロニーを作り上げます。

paypalの成功でお金があるとは言っても、それを自費で、無償でやるのは不可能です。

まずは、価格の安いロケットを作ることで、ビジネスとして成立させ、人類の火星移住への足がかりとしようとしたわけです。

最早、SFの世界です。

ここまでインターネット(オンライン)業界で素早くビジネスを成功させてきたイーロン・マスク氏でしたが、さすがにこれを短期間で実現するのは不可能です。

しかし、スペースXは、着々と実績を積み重ねてきました。

以下に、その一部をご紹介します。

 

2010年 : 民間企業として初めて宇宙船の打ち上げ、軌道、回収に成功

 

2012年 : 民間企業として初めて国際宇宙ステーションに宇宙船を送る

 

2019年 : 民間企業として初めて宇宙船の有人飛行に成功

 

2020年 : 民間企業として初めて有人宇宙船を軌道に乗せ、国際宇宙ステーションに到着させる

 

スペースXのもっとも大きな功績の一つは、これまで国家プロジェクトだった宇宙開発事業を会社(企業)が主導できるものにしたことでしょう。

今後、この分野は、競争にさらされ、さらなる発展が期待できそうです。

 

ポイント!

・これまで国家事業だった宇宙開発を民間会社(企業)として始めて成功させる。

・低コストなロケット製造を足掛かりとして、火星移住を目指している。

 

電気自動車の最先端を行くテスラ

さて、イーロン・マスク氏の事業のもう一つの柱、テスラについて紹介します。

冒頭で世界一の富豪になったことを取り上げましたが、主な原因は2020年にテスラが株価を500%も上昇させたことです。

このため、テスラが電気自動車の会社(企業)であることを知る人も多いのではないでしょうか。

しかし、実は、テスラは、自社を「電気自動車や太陽光発電で得られた持続可能な交通やエネルギーへの移行を支援する会社」としています。

テスラは、電気自動車の会社(企業)として一定の成功を収めていますが、スペースX同様、こちらもその先があります。

それは、「クリーン・エネルギー」や「持続可能なエネルギー」と呼ばれるもので、かなり難度の高い分野ですが、電気自動車はあくまでそのとっかかりなのです。

 

電気自動車って本当にクリーン?

電気自動車を含め、環境に配慮した事業は評価の難しい部分が多いです。

昨年、日本ではレジ袋の有料化が義務付けられましたが、これも本当に意味があることなのか、評価が分かれています。

そもそもレジ袋はナフサという廃棄物のリサイクル品であること、エコバッグを生産する際の環境負荷の方が大きいなど、様々なことが言われました。

電気自動車についても同様です。

電気自動車は燃費が良いということがよく言われます。

「燃費」なんていう漢字を当ててしまうせいで、環境に良さそうに感じてしまいますが、結局のところ、ランニングコストが安いというだけのことです。

ガソリンのランニングコストが高くなるのはガソリンの価格の約半分がガソリン税と石油税であるせいです。

つまり、電気自動車の燃費が良いのは節税によるものとも言えるのです。

また、日本の場合、電気自動車を動かすのに必要な電気の多くを石油を用いた火力発電に頼っています。

突き詰めて考えると、動力源は石油ということになります。

こうして考えると、電気自動車を開発するだけでは「クリーン・エネルギー」や「持続可能なエネルギー」という理想を実現するにはほど遠いと言わざるを得ません。

電気自動車が本当にこれらを実現するためには、電気自動車を動かすための電力を何から作り出しているのかということに配慮しなければなりません。

テスラがすごいのは、その先までしっかりと設計されている部分です。

 

電気自動車を本当にエコにするための太陽光発電

テスラは、ソーラーシティという太陽光発電を行う子会社を持っています。

スペースXやテスラの成功の影に隠れてあまり目立っていませんが、アメリカでは太陽光発電のシェアで第二位を誇る会社(企業)です。

そして、この会社(企業)も、イーロン・マスク氏が会長を勤めています。

ソーラーシティは、電気自動車で必要な電力を供給するため、家庭用のソーラーパネルを提供しています。

発電の性能としては、一日で80kmを走行する分の電力を相殺できるようです。

また、2016年には、ソーラーパネルと屋根用のタイルを一体化したソーラールーフという製品を開発しています。

この製品は、一枚一枚がソーラーパネルとして機能する屋根用のタイルです。

つまり、これを利用すると、外観を気にすることなく自宅に太陽光発電の仕組みを導入することができます。

 

テスラのコア技術

さて、ここまでテスラの設計する「クリーン・エネルギー」について書いてきましたが、そのコア技術となる部分についても紹介しておきます。

電気自動車、自宅での太陽光発電、このいずれにも重要となるのが、バッテリーです。

容量、速度、安全性など、バッテリーには高度な技術が求められます。

スマートフォンのバッテリーから発火するという事故を聞いたことがあるのではないでしょうか。

スマートフォンにはリチウムイオン電池というバッテリーが使われています。

この電池がもとになる事故の件数は十年前から増え続けています。

そして、電気自動車にも同様のリチウムイオン電池が使われています。

スマートフォンでも負傷者を出すくらいの事故になるのですから、電気自動車を動かせるだけサイズということになると、事故の規模もどうしても大きくなってしまいます。

それだけにバッテリーの製造は責任が重大で、高い技術が必要となります。

ちなみにテスラのバッテリーに参画しているのは日本のパナソニックです。

ネバダ州にテスラ工場とパナソニック工場が併設されたギガファクトリーと名付けられた施設があり、ここでパナソニックがテスラ用のバッテリーを生産しています。

また、このバッテリーは電気自動車だけでなく、自宅での太陽光発電によって得た電力を蓄積するパワーウォールという製品にも使われています。

電気自動車のバッテリーというだけではなく、太陽光を蓄電するというかたちで、「クリーン・エネルギー」を実現するためにも一役買っているのです。

イーロン・マスク氏が電気自動車に参入した当時、どこまで想像できていたか定かではありません。

けれど、電気自動車を作り、そのバッテリーを作り、それは太陽光発電の蓄電池となり、その成果はまっすぐに「クリーン・エネルギー」を実現する方向に向かっています。

 

ポイント!

・電気自動車の製造を足掛かりにして、持続可能なエネルギー社会の実現を目指す。

 

ポストジョブズと呼ばれて

アップル社のスティーブ・ジョブズ氏が亡くなった頃、ポストジョブズとして様々な人物の名前が挙がりました。

その当時、すでにスペースXとテスラを手がけていたイーロン・マスク氏も当然のように名前が挙がりました。

確かに、スティーブ・ジョブズ氏とイーロン・マスク氏はともに世界にイノベーションを起こす人物だと言えます。

paypalの共同創業者だったピーター・ティール氏が面白いことを言っていたので、少し紹介しておきます。

今の若者に「なぜジョブズを目指さないのか?」と言うことはできても、「なぜマスクを目指さないのか?」ということはできないということです。

スティーブジョブズ氏のロールモデルは若者でもマネしやすいものでした。

しかし、イーロン・マスク氏の事業は規模がまったく違います。

ほとんどの人にはマネのできないことに挑戦しています。

火星への移住や持続可能なエネルギー社会の実現はスティーブ・ジョブズ氏が思い描いたものよりも遥かに大きいと言えるでしょう。

イーロン・マスク氏は「火星で死にたい」なんて発言していたりもします。

もしかすると、世界でもっとも大きな夢を思い描いている人かもしれません。

 

ポイント!

・火星への移住。

・持続可能なエネルギー社会の実現。